北の縄文ニュースレター

2013.04.11

2013年3月2日 道民会議シンポジウム/基調講演 猪風来氏

北の縄文道民会議シンポジウム

■縄文の心、根源とは何か

北海道で20年間、縄文の心をつかまえたいと思い命がけでやってきました。そこで、それなりのものをつかんだと思っています。私がそういう体験を通してつかんだ「縄文の造形の根源とは何か」を簡単に話します。
縄文は、縄を転がしてつけた文様があることから「縄文」と言われます。
その縄文の造形を語るとき、肝心な点が二つあります。縄文の造形はすべて、この二つからできていると言ってよいでしょう。その一つが勾玉(まがたま)です。勾玉の形は、女性は特におわかりと思いますが、「ややこ」の形です。命は子宮に着床し、こういう形で発達していきます。しかもこの形は人間だけでなく、すべての生き物に共通しています。ニワトリも卵にいるときはこういう形です。魚も虫も命あるものはこれから始まります。つまり、生命あるものの根源の形です。
もう一つが縄です。縄、糸、そういうものは、生活に欠かせない網になり、衣服にもなり、様々なものになります。つまり、命を守る力の根源的な形です。この二つから縄文造形が発展していきます。縄文土鈴
たとえば、このような縄文土鈴の外側には渦巻きがあります。これは生命の波動を表現しています。周りには縄が転がしてあり、生命を守っています。なかに子供の生命が入っていて、周りは母胎ですね。それがぶつかり合って音が出ます。生命の音は魔を払うのです。こうした土鈴は、縄文人の抽象表現の極みです。鈴は今も世界のすべての宗教で使われ、日本の神道にも鈴がありますね。仏教の木魚も鈴の変形です。この形こそが生命の根源であり、魂の形です。それを縄文人はとらえたのです。

そういうなかで、私はさらに爆発的な作品を作りました。これは「土夢華(どむか)」シリーズです。この渦は全部勾玉が発展したものです。

土夢華

 

 

 

 

「土夢華」(2001年)

 

 

これはさらに勾玉が爆発したもので、4.3メートルある作品です。アイヌ語の「ウフイカムイ」、火の神という名前です。

「ウフイカムイ」(2002年)

 

 

 

 

 

「ウフイカムイ」(2002年)

 

次に火焔土器について解説しましょう。火焔土器
これは一昨年、大英博物館で土偶展が開かれ、次の都市に日本の縄文土偶とバルカン半島の土偶展があったときにイギリスに招待されたときの私の文章です。世界中の学者が30人ほど集まり、一般の人も参加して会議が行われ、そのときに発表したものです。

 

「火焔土器造形論」

「火焔土器は、多視点、多時間、多次元の造形法によって、生命と魂を超時空的に表現したオブジェである。その造形は三層の次元を持ち、X、Y、Z座標空間において文様が回転体をなし、線対称であるが、非シンメトリーである。万物の命と魂が下から上へ発生—躍動—生命円舞し、次の次元の異なる三層を連続形成している。
器体を構成しているのは、生命の源である勾玉の増殖する渦巻き文様である。これは「生命と魂は万物と連なり同根である」という万物同根思想に根ざした形である。そこに表現されている内容は、精霊が立ち昇り、大いなる大地の子宮に着床し、うずまきの躍動を経て、万物の生命として生まれるという、精霊感、生命観、世界観を示している。そしてそれは、輪廻転生し、大自然のなかで生かされているという、生と死の再生の物語でもある。だからこの文様は、生命を育む羊水であり、また生命の炎である。すなわち、火焔土器文様造形は、万物の生命の豊穣を思い、願い、祈る縄文人の<豊穣の呪術>であり、また、霊力のあるものである。これは重層的な、多視点、多時間、多次元の認識と表現をもったずば抜けた造形であり、まさしく縄文人の高度な造形力の賜物である。」

大英博物館の土偶展を監修したサイモン・ケーナ博士は、この文章をみて「猪風来さん、これはものすごいよ!」と言ってくれました。実はイギリスに行ったとき、最初の打ち合わせでは、最終日に発言の機会をもうけますので、それまでは他の参加者と一緒に参加してください、と言われていました。ところで、あなたはどんなことを発表されますか?と聞かれたので、この文章と資料を渡しましたら、次の日、「最後の日ではなく、最初の日にオープンレセプションがあり全出席者が集まりますので、そこで発表してもらいたい」と言われました。つまり、一晩で刺身のツマから主役に昇格したわけです。

こういうことは日本ではありませんが、イギリスなどではよく起こります。かれらは新しい知見、自分たちが持っていない知見に対しては敬意を払い、貪欲にそれを吸収しようとします。だから土偶展もやるのです。日本の土器や土偶は、かれらが知らない知見を有していて、かれらはそれが欲しいのです。

火焔土器の話に戻ります。土器は下から積み上げて作っていきます。これだけ大きいと、上のほうに行くとへたってしまいますから、ある程度のところまで行ったら下から文様を入れていきます。発想はすべて下から上へ向かって上昇する発想です。
まずは土器の底に精霊が立ち昇ります。精霊とは辞書を引けば一目瞭然ですが、万物に宿る魂であり、すべてのものの根源をなす霊気であります。最初は形をなしていません。そして、大地の子宮に着床します。そこで形をなして勾玉になり、うごめき始めます。
さらに成長すると次の新しい次元に飛躍し、勾玉がいくつも連動しています。勾玉が2つ連動した形は家紋などにも使われますね。ここでは5つも6つも連動し、しかも凝固していません。絶えずうごめく生命です。家紋になると動かない、時が経って固まってしまったのです。現代は、家紋のように凝固している時代です。縄文の文様が凝固した時代が、2000年も続きました。それが、今もう一度動き始めています。
さらに上へいくと、第三層目で命が生まれます。この文様は何かと言うと、炎であるという意見もあり、水であるという意見もあります。またはニワトリのとさか、鶏冠文であるという人もいる。四つ足動物である、オオカミである、と言う人もいます。また、小林達雄氏などは、女性が組体操のようになって乱舞していると言います。これらは全部正解であり、縄文の文様は複合的、重層的に、増殖させた文様で、およそ現代人が発想できるすべてが組み込んである、と言ってよろしいと思います。
名前が火焔土器となっていますが、まさしくこれは生命の炎です。地球でもあり、子宮でもあります。宇宙的な概念を三層で同時に表現しているのが、火焔土器です。

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